News Release 2020.9.23
「温泉水でも安定した熱交換が可能な熱交換器を開発」
―温泉水から析出する固形物を除去し、熱交換効率の低下抑制に成功―
NEDO、東北大学、(株)馬渕工業所、小浜温泉エネルギーは、温泉スケールと呼ばれる固形物が析出しやすい温泉水でも安定した熱交換が可能な熱交換器を開発し、1カ月間の温泉熱回収の実証試験に成功しました。
今回開発した熱交換器は、熱交換器に付着した温泉スケールを自動的に取り除くことで、熱交換の効率を維持することが可能です。
これにより温泉水の熱交換器のメンテナンスコストの低減が見込めます。また、温泉水以外にも、汚泥を含む工場温排水や藻類・貝類を含む海水・河川水など、さまざまな分野の熱交換に応用でき、未利用熱や再生可能エネルギーの利用促進が期待されます。
■概要
一般に温泉水はカルシウムや硫黄などの溶解成分を含んでいるため、熱交換器の伝熱面上に温泉スケール※1と呼ばれる固形物として析出し、熱交換を阻害することがあります。そのため、頻繁な清掃が必要で、メンテナンスコストが高いことが課題でした。
この問題を解決すべく、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、国立大学法人東北大学、株式会社馬渕工業所、一般社団法人小浜温泉エネルギーは、「NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム※2」において、伝熱面を回転させ、そこに羽根を押し当てることで伝熱面に析出した温泉スケールを剥ぎ取れるようにした熱交換器を開発しました。これにより、表面を常時温泉スケールが付着していない状態に保つことを可能にし、熱交換の効率を維持することができます。また、長崎県雲仙市の小浜温泉※3で1カ月間の熱交換実験を行った結果、伝熱面からの温泉スケールの除去と熱交換効率の低下抑制に成功しました。
本技術は熱交換器のメンテナンスコストの低減につながるため、温泉宿などの経費節減や熱利用の促進などが期待できます。また、温泉熱発電や、汚泥を含む工場温排水、藻類や貝類を含む海水や河川水との熱交換(冷熱利用)など多岐にわたる分野での利用が期待でき、さらなる未利用熱や再生可能エネルギーの利用促進が期待でき、CO2排出削減にも寄与する技術です。
なお、本成果は9月24日から開催される化学工学会第51回秋季大会にて発表される予定です。
詳細は「温泉水でも安定した熱交換が可能な熱交換器を開発」(PDF)をご参照ください。